高山宏 學魔_nonbot 身内と胎内 『失われた庭』の僕 17~20

身内と胎内 『失われた庭』の僕 17): こういう感覚と気分で進むやりとりだから、女の腹の中の子については全員一致で堕ろせということになった。腹をくくっていたぼくは席を蹴った。今日を限りにあなた方を近親とも縁者とも思わない。ぼくと女房と女とで決めるから、一切干渉御無用、と。

身内と胎内 『失われた庭』の僕 18): 女房が追ってきて、うむのは仕方ない、その子を四番目の子として二人で引きとってもよいので、とにかく女とは別れてと言う。二人で泣いた。奥さんは今でもご主人を熱烈に愛しておいでになる、それにしてもあなたもバカな人だ、人も羨やむ順風満帆の人生を、と、..

身内と胎内 『失われた庭』の僕 19): 更生証書の用紙の向うで弁護士が言った。知り合いの弁護士なので、いちいち言うことが身にしむ。結局、ぼくが稼いでいる定期的なものは給与といわず賞与といわず、一切合財が女房の口座に入る、物価の大変動だとか、ぼくの転職だとかある場合には再度話し合う..

身内と胎内 『失われた庭』の僕 20): といった、およそ余人にはバカバカしくて想像を絶する文章をさらさらと書いて捺印した。月の半分をサラリーマン、残る半分を執筆と翻訳に明け暮れるフリーランサーとして送るぐっちゃぐちゃの日々が、この瞬間に始まる。ぼく、愛する相手は結構いる。

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