鏡花幻想文学誌 異界/境界 46): あるいは「私」にとっての高野聖そのものが老賢者の元型なのかもしれない。いずれにしろ、鏡花偏愛の夢幻能の「深」層構造を説明して余りあるこの心理学的図式は、また見事なばかり『高野聖』にも当てはまる。心理学的図式がこれほどストレートに説得力を持つのは..
鏡花幻想文学誌 異界/境界 47): そうした分析法と鏡花文学が時代の同じ根から出発しているからである。時代は病に罹っていた。富山の売薬も『夜叉ケ池』の独善的な村人たちも功利と効率しか念頭にない。魔界の女主人はそれらを容赦なく畜生に化え、魚に変えた。心根の優しい人間を..
鏡花幻想文学誌 異界/境界 48): しかし飛騨山中の美しい「薬師」はたしかに救うのである。ユングが試みにアニマの元型と呼んだそうした夢という架空界裡の母/女は、受けとり手の境位に応じて怖ろしい人食いとなって現じもし、一方、優しいケアテイカーともなって現われるというが..
鏡花幻想文学誌 異界/境界 49): 『高野聖』の魔女も『草迷宮』の女もその例外ではない。いずれも心優しい主人公を夢で導く反面、下卑た下心を持って近づく男どもはこれを蟇に変え、馬に変え、狂人に変えて憚らぬ両義的そのものの存在である。
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