いつのころからか、トリビュートアルバムというものが音楽業界にあらわれた。堅苦しく説明するならば、ある歌手やグループの音楽を聴いてそだち、それをきっかけに音楽の世界へと入って、自分たちもまた功をなしたミュージシャンが、憧れのひとの楽曲をカバーして尊敬の念をあらわすという趣旨の企画版である。
さて、そんなトリビュートアルバムの構成はたいてい代表曲が網羅されていているものだが、問題になってくるのはその楽曲の表現方法である。正直いって、参加ミュージシャンごとに作品の出来不出来が激しいのが、トリビュートアルバムなのである。ほとんどカラオケにちかいカバーをするものもいれば、アレンジをかえ、リズムをかえ、まったく別の楽曲にして自分の表現とするものもいる。それがトリビュートアルバムだ。
そんな多くのトリビュートアルバムのなかでも、アメリカのロックバンドKISSへのトリビュート企画「KISS MY ASS」に収録されているYOSHIKIの「Black Diamond」のカバーは、まったくもってぶっとんだものだった。ロックバンドの楽曲のカバーであるのに、絶叫するボーカルはおろか激しい演奏はまったくなくて、全編が美しいオーケストラの調べで展開されるのだ。
ちなみにYOSHIKIは、はじめはこの企画を自分が率いるX JAPANとして参加してほしいと依頼されたというが、紆余曲折あって自分ひとりだけでやることになったそうだ。その結果、このようなアレンジにつながったのだろうが、YOSHIKIの才能、まことに恐るべしである。
なお、わたしは「Black Diamond」は、このYOSHIKIバージョンをはじめに聴いたので、本家本元のKISSには申し訳ないが、「Black Diamond」といえば、ほの暗いなかにもきらめきがある、この調べを思い出してしまうのだ。
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