ルイ・アームストロングの「What a Wonderful World」は、ベトナム戦争が行われていた1967年に発表された。木々は萌え花が咲き、ひとびとは笑顔で愛をつたえあう。なんて素敵な世界なんだろう。そう歌いあげるこの曲は、戦争に対するひとつの意思表示としてうたわれたが、発表されたばかりの頃は、そのあまりに理想主義的な歌詞のせいもあって、あまりぱっとした売れ行きではなかったという。
わたしは子守唄のようなゆったりとしたテンポとルイ・アームストロングのしゃがれ声で歌われるこの曲を、プロテストソングだと思って疑わない。抵抗は、なにも激しければいいというものではない。サッチモは、血みどろの世界をまえにして、それとは反対の世界を歌いあげることで現実を糾弾するのだ。
さて、この「What a Wonderful World」は、現在ではまさに世界のスタンダードナンバーとなっていることもあって、さまざまな歌手がカバーをしているが、わたしはジョーイ・ラモーンがカバーする「What a Wonderful World」がいちばんのお気に入りである。
カバーの魅力は、どれだけ原曲とはことなる魅力的な解釈ができるかにかかっているが、ジョーイ・ラモーンは「What a Wonderful World」をパンク調でカバーしている。たゆたう大河のような、いのちそのものの揺りかごのような原曲にたいして、ジョーイ・ラモーンは徹底的な縦ノリで押し切る。そんなやけっぱちで刹那的な雰囲気が曲全体をかがやかせて、なんともいえないおもむきを抱かせる。
なお、このジョーイ・ラモーンの「What a Wonderful World」は、ミュージックビデオもすばらしい。ティーネイジャーと思しき男女がアパートメントの一室でジョーイ・ラモーンのビデオ映像を見て踊り狂い、興奮の果てにお互いを見つめ、引き寄せられるように抱き合って、ふたりだけの行為にうつる。なんとも素敵ではないか。ふたりのすがたは、愛しあっていたら争いなんて絶対におきないという、もっとも分かりやすいメッセージになっている。
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