空き瓶通信0040 『キネマの神様』 志村けん、沢田研二、山田洋次

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志村けんの初主演映画となるはずだった『キネマの神様』だが、志村けんの代役に沢田研二が決定したと報じられた。わたしは、こんなに的確な代役はないと思う。以下、志村けんと沢田研二、そして本作の監督である山田洋次について書いてみたい。

志村けんと沢田研二は、ふかい友情で結ばれていたという。じっさいふたりの親しさは、沢田研二がザ・ドリフターズの番組にゲスト出演したときのやりとりから自然と伝わってきたものだった。

ドリフのコントは、たいていは同じネタの焼きなおしで、その出だしを見ただけでもこれから先の流れや笑いどころがわかってしまうものではあるが、志村けんと沢田研二のコントも、だいたいいつも同じようなものだった。

とくにくりかえしやっていたのは、志村けんがタレントで沢田研二が付き人という設定で、志村けんと沢田研二が鏡を隔ててそれぞれが実体と鏡像を演じて、飛び上がったりものを食べたり、ボールを投げたりするコントだった。ふたりは演技ではない自然な反応をしては、いつも笑いあっていた。

つまり、志村けんの鏡像としてのジュリーを、わたしたちは見慣れているのである。そう考えると、志村けんの代役は、たしかに沢田研二しかいない。山田洋次は、ほんとうにすてきなひらめきをしたと、こころから思う。

さて、沢田研二と山田洋次の関係についても触れたい。数日前の記事でも書いたが、沢田研二の現在の妻は田中裕子である。ジュリーがその田中裕子と出会ったのは、ほかでもない山田洋次が監督をした『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』においてであった。

この映画で沢田研二が演じる役どころは、母親に死なれた孤独な青年・三郎である。故郷の旅館で田中裕子演じるデパートの販売員・蛍子(けいこ)と偶然出会った三郎は、東京に戻ってからも蛍子と逢瀬を重ねて行く。これが映画の大まかな筋であるが、そんな役柄を演じたふたりは映画がクランクアップしたあとも愛の火は消えるどころか大きくなる一方だったようで、沢田研二は当時の妻を捨てて、田中裕子と一緒に暮らすことを選ぶことになったのだ。

つまり、沢田研二が『キネマの神様』の代役を引き受ける理由は、志村けんとの友情にくわえ、最愛の妻、田中裕子と出会うきっかけを与えてくれた山田洋次への恩義に報いるという側面もあるのだとおもう。

ジュリーはとても男気のあるひとで、まがったことが大嫌いであると同時に、約束や信念といった目に見えないものの価値を大切にするのだろう。わたしはそんな沢田研二のことが、大好きである。

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