空き瓶通信0027 新しい日常とは

jplenio / Pixabay

本日は、2020年5月8日金曜日。

きょう、50日ぶりぐらいに電車に乗って隣町まで出かけた。外出の理由は、このところいきおいよく下着を捨てつづけていたら、なんといま履いているものがラスト一枚になってしまったからだった。パンツがまるでない。まさに緊急事態である。

昨日からお店が再開しているのを外出前に確認してから駅に向うと、朝の10時前だというのに、ひとがまるでいなくてびっくりする。お正月だってもっと人出があるだろうに、なんということだろう。わたしはずっとこのところ、基本的には家にいて、外出するにしても近所のコンビニかスーパー、駅前まで行っても薬局や100円ショップ程度しか足をはこばなかったから、これにはおどろいた。

隣町について、目的のお店が入っている家電量販店に向う。すると建物の入り口には顔を透明のシールドで防御した男のひとが立っていて、何を買いに来たんですかと、ほんの数人の来訪客相手にひとりひとり確認をしている。まるでカフカの世界のようだ。わたしは目的のお店の名前を告げ、指先の消毒をしてから店内にはいった。

すると、そこには驚くべき光景があった。いつもは多くのスタッフが行きかい、大きな声を張りあげている家電量販店なのに、そこはしんと静まりかえっていて、客はおろかそのスタッフさえも、ほんの数人しかいなのである。

わたしはエレベーターに乗りこんで、下着を購入すべく最上階に向かった。エレベーターの床には靴のマークが描かれたイラストが何枚も張られていて、お互いに距離をとって立つようにとの指示がある。わたしはパネル付近にいた女のひとの対角線上に立った。

さて、晴れて目的のフロアに到着したが、ここからがまた未知のものだった。エレベーターからでると規制線が張られていて、その線の先に体温計をもったスタッフがたっているではないか。なんと検温をしないと、店内に入れないらしい。

非接触型の体温計を額にかざされる。何度なのかは教えられなかったが、入ることを許可された。パンツを買うために体温を測ることになる日がくるなんて、夢にも思わなかった。

ひさしぶりに来たが、通いなれた店だから、どこに何が置いてあるのかはわかる。わたしは適当に下着をみつくろい、さて会計をしようとレジに向うも、何か様子がおかしい。なんとレジがないのである。どうしたものかと思ってあたりを見てみると、どうやらセルフレジになったようで、めいめいでレジを操作して、お金を払うかたちになっているらしい。

申し訳程度にかかっている洋楽のBGMを聴きながら、ありがとうございましたともいわない機械相手に会計をすませ、エレベーターに向う。ひとが数えるほどしかいない万単位の服飾品が並んでいるフロアはほんとうに殺風景で、無機質なものだった。

疫病をおそれて顔をフィールドで隠すスタッフと、検温をしてお店に入り、機械相手にお金を払い、とにかくひととの接触を避けて、万引きでもしたかのように逃げかえるひとびと。わたしたちが思い描いていた未来は、こんなものではなかったはずだ。わたしたちは、気がついたらディストピアを生きているらしい。

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