「モダンアートの街・新宿」を見に行ってきた


2026年2月14日土曜日、SOMPO美術館の「モダンアートの街・新宿」を見に行ってきた。この展覧会は、西洋美術を吸収してからの日本の美術家が、新宿という街を舞台に近代をどう表現したのかを振り返るという主旨のもとに作品が展示されていたが、わたしの目当ては、松本竣介の「立てる像」であった。

倫理の教科書の口絵に載っていたのを目にしたのが、わたしとこの絵との出会いであった。表紙をめくってすぐのところに、その姿はあったのだ。じっと遠くを見つめる青年は、何を思うのだろう。そのような言葉が、絵の下に書いてあったような気がする。

じっさいに、松本竣介がこの絵にどのような思いをこめて描いたのかは知らない。だが、この絵が倫理の教科書に掲載されていたということとその作品名から、高校生のわたしは、自立というメッセージを勝手に受けとった。自分の足で大地を踏みしめ、仁王立ちをする。自立とは、そういうものなのだろうという思いは、いまでもかわらない。

想像していたより、ずっと大きな作品だった。やはりおおくのひとがこの作品との出会いをもとめてきたのだろう。近づいては離れ、離れては近づき、じっと見つめては、スマートフォンのカメラを向けている。わたしもそのなかでもまれながら、ああこれなのかと思いながら、じっと見た。

じっさいに目にすると、背景が印象的だ。空一面を覆いつくす雲。そんな不安を掻き立てる風景を背に立つ若い男。遠近法がまるでない路地にいるひとびとや犬たちは影のように平面的で、彼とは異なる次元にいるかのようだ。リアリズムの視点からみると難癖をつけられるのだろうが、それがいい。それだからこそいい。

会場を隈なく見て、何度目かにこの絵の前に立ちもどった折、不意に人波が途切れ、わたしはこの絵とふたりきりで正対することとなった。じっと立ち、遠くの何かを見据えている瞳。おまえはいま真剣に生きているのか。そう問われているようだった。

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