現代のわたしたちは、音楽といったときに、歌を思い出す。だが、西洋のいわゆるクラシック音楽をはじめとして、日本の音楽にもその他の地域の音楽にも、昔からの音楽は、必ずしも歌をともなってはいない。
もちろん、昔から歌は存在した。歌というものは、言葉とメロディー、さらにはそれを歌うものの声で織り込まれた、ひとつの作品である。言葉とメロディー、そして声が重なりあって、ゆたかな感情表現をするのに歌ほどぴったりのものはない。だから、音楽と歌は、いつしかイコールの関係になっていったのだろう。
しかし同時に、楽器の奏でる旋律でしか、表現できない世界というものがある。むき出しの音が、音ゆえにわたしたちのたましいを鷲掴みにする。そんな音楽がある。今回取り上げるPATAの[So Far]は、声によらない思いの表現である。
タイトルのSo Farは、これまでのところという意味であるが、ものがなしいギターの旋律を聴いていると、さまざまな思いを抱く。ある時間が経過したなかで、過去を思い出しながら、そしておそらく、いままでのことを多少悔やみながら、それでも、そんな苦い思いを抱きながら、これからを生きていこうとしている。そんなイメージが浮かんでくる。So Far。これまでのところ。このメロディーを聴いて、あなたは、なにを思うのだろう。
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