空き瓶通信0077 平林亮子『レシートで人生を変える7つの手順』

Panals / Pixabay

『レシートで人生を変える7つの手順』は、レシートという切り口で現状を分析し、理想の生活スタイルを見つけようという趣旨の本である。レシートに関する本というと、ふつうは確定申告に関係するものばかりだが、本書には節税についての言及は一切なく、テーマはあくまでレシートそのものである。

では、この本にはレシートについての、何か書いてあるのか。レシートにはお金をつかった対象はもちろんのこと場所や日時といったことまで印字されているが、著者はまず一ヶ月のあいだレシートを集めてみることを読者にすすめる。時系列や消費品目別に整理してみると、自分の行動の傾向が浮かびあがってくるというのである。

たしかにレシートを見ていると、自分のある一定の行動パターンが見えてくる。暑くなってからやたらとアイスばかりを購入しているとか、最近は野菜をあまり食べていないといったようなことが、はっきりとわかる。著者はレシートには人生そのものが反映されていると述べるが、たしかにそのとおりのようだ。

本書の特長は、ふつうならお金の問題だけになってしまいがちのレシートというものを、自分の生活の改善のためにつかう点にある。じっとレシートを見て、最近は宵っ張りな生活をしているとか、自分は本当にこれが欲しかったのだろうかと思うことで、自分の現状や価値観を再確認できるというのである。

読みすすめていて、わたしはレシートを集めて眺めるということは、一種の自己セラピーとして有用なのではないかと思った。自分の行動が客観的な情報として記載されているレシートから、自分の趣味嗜好や行動の傾向を知り、理想としている生活と現状にどれほどのギャップがあっているのかを、誰の手も借りずに分析することができるからだ。

自分の欲望は他者の欲望であるというラカンの言葉があるが、わたしたちはこの高度に発達した消費社会において、さして欲しくもないものをなんとなく欲しいと思い込み、結果としていろいろな物を買わされているのかもしれない。レシートに印字された自分の過去の行動から自分を見つめなおす。現代人にぴったりの方法である。

↓↓↓読んだよ!

0