高山宏 學魔_nonbot 身内と胎内 『失われた庭』の僕 40~43

身内と胎内 『失われた庭』の僕 40): それが帯に「挑発的実験小説」を謳う『失われた庭』だと思う。それまで一面識もないぼくに突然、自署名入りのこの本が送られてきたのも、ひとつには矢川さんがぼくを渋澤サロンに連なる一人とも目したためと思うが、残念これはちがう。

身内と胎内 『失われた庭』の僕 41): 早い話、ぼくは仕事の依頼で北鎌倉の渋澤邸にただ一度きり行ったことがあるだけで(と言って、この一度きりが決定的にたのしかったことは随所に記した)、雷雨のお通夜に顔を出したことを唯一の例外として、渋澤氏他界まで直のやりとりはない。

身内と胎内 『失われた庭』の僕 42): 葉書も何通か行き来があったが、渋澤氏から来た絵葉書を、子供の幼稚園で古切手を回収しているのに協力しようというので、他の葉書と一緒に切手のところをハサミで切った。言っておくが、ぼくという人間の、ものに対する執着のなさはこれはこれで伝説的なもので..

身内と胎内 『失われた庭』の僕 43): ある日、拙宅に来た五柳書院社主にこの呆れた葉書の残骸を見つけられ、大いに叱られた。今は当書院に額に入れて飾ってある、やも。ぼくの渋澤評価のありようが、渋澤周辺にはうとましがられた。

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