空き瓶通信0083 中谷美紀「STRANGE PARADISE」

1919021 / Pixabay

中谷美紀というと、いまや押しも押されぬ大女優といった風格だが、1990年代後半の一時期、坂本龍一のプロデュースのもとで歌手活動をしていた。もっとも、当時を知るものからいわせると、そのころの中谷美紀はヒット曲を連発していたこともあって、女優というよりも歌手としての印象のほうがつよかった。

そんな中谷美紀の坂本龍一による2枚目のプロデュースシングル、「STRANGE PARADISE」は、なんとも不思議な曲である。中谷美紀は、わかれたのちにひとりで生きる毎日のなかで、もう過去のものとなってしまったかつてのひととの時間をふと思い出すさまを歌っているのだが、せつない歌詞と透明感のある細い歌声、そして独特の浮遊感のあるグルーヴが一体となっていて、聞いているとなんだか泣きそうな気持ちになってくる。

ヘミングウェイの短編小説に、「何を見ても何かを思い出す」という作品があるが、わたしたちの記憶のというものは、五感を刺激するさまざまなものがきっかけとなって、一気によみがえってくる仕掛けになっている。中谷美紀が「あなたと見てた風景(もの)が 私を孤独にする」とうたうとき、その歌声を聴くものはわが身を振りかえって、たしかに人生とはそういうものかもしれないと、ふかく同意することになる。不在ほど、そのひとの存在をなまなましく感じさせるものはない。

Miki Nakatani 中谷美紀 – STRANGE PARADISE

↓↓↓読んだよ!

0