空き瓶通信0034 大下英治『百円の男 ダイソー矢野博丈』

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わたしは伝記を読むのが好きだ。歴史上の人物だったら、文学者や哲学者、美術家や音楽家、数学者や科学者などの伝記を好んで読む。だがその一方で、同時代を生きている人物の人生を読むのも趣味である。こちらに関しては、企業家や海外ミュージシャンの本が多い。

さて、今回とりあげる『百円の男 ダイソー矢野博丈』は、100円ショップダイソーの創業者、矢野博丈の人生を描いた本である。創業企業家の伝記本は、そのひとの人生と企業の物語が一体となっていて読みでがあるが、本書もそのような本であり、矢野博丈というひとりの人物の人生を味わうと同時に、100円ショップという新しいビジネスモデルを生み出したダイソーという企業について知ることが出来る内容となっている。

矢野博丈は、とにかく欲がない人物らしい。自分はとくにこれといった能力もなく、働くことくらいしかできないので顧客がよろこぶことを一生懸命していたら、気がついたら今日のダイソーになっていたというのが、彼の本音なのだと述べられている。

また、ダイソーの歴史や内情についてもさまざまなことが書かれていて、読んでいてあきない。なんでもダイソーの商品は、たとえ利益が1円しか出ないものであっても、販売しているらしい。1円しか利益が出なくても、それを100万200万と売れば、それだけ利益が大きくなる。100円ショップとは、規模の経済なのだ。

なお、本書は家族やダイソーを支える社員など、矢野博丈をとりまくひとびとの人生についても細かく取材をしていて、彼らの人生もまた魅力的に語られている。一冊の本のなかにさまざまな人生が響きあっていて、それが本書をゆたかにしている。

カンブリア宮殿 Ryu's Eye (大創産業 代表取締役社長 矢野 博丈)

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