空き瓶通信0028 Stephen Colbourn [The Lost Ship]

Comfreak / Pixabay

わたしのいくつかの趣味のなかに、英語でSFやホラーやミステリーを読むことがある。これは不思議な快感をともなう読書体験である。非日常を描くジャンルの小説をふだんもちいない言語で読むことで、ふかいトリップ感を味わうことができるのだ。

この[The Lost Ship]は、英語を母語としない学習者用の、いわゆる多読用のリーダーであるが、16ページほどのなかで、十分に英語で不思議な世界を堪能できる作品となっている。

Lost Shipという言葉からもわかるように、本書は幽霊船が主題である。航海中にとつぜん目の前に現れた謎の船、いくら呼びかけをしても何の応答もない。物語は、そんなふうにしてはじまる。

本書の最大の魅力は、全ページいっぱいにあふれている絵である。それはいかにも子供が読む冒険物をいろどるタイプの絵なのだが、おそらくアクリルガッシュで描かれたと思われるその筆致は重厚で、挿絵やイラストといった言葉ではおさまりきらない印象を読み手にあたえる。

なにしろ学習者用のリーダーであるので、作中で用いられている語彙や文法はとても単純で、じっくり絵を見ながらでも、十分以内に読了できる手軽さもいい。本書は英文多読学習者にかぎらず、読書として楽しめる一冊である。

THE LOST SHIP by Stephen Colbourn

↓↓↓読んだよ!

0