鏡花幻想文学誌 異界/境界 61): それほどに物語は錯綜と嵌入を繰り返す。駄洒落めくが「草」双紙の文化なのである。リアリズム指向の時代の只中に仕掛けられた物語(ロア)の世界、テクスト化された異界なのである。その異界にはたとえば江戸が澱む。「江戸狭斜の情趣を喜び味ひたるものは..
鏡花幻想文学誌 異界/境界 62): 遂に20世紀社会の生存競争に堪へ得ざるものなる歟」という鏡花の言がすべてを語っていよう。そしてもう一方には「山神山人の伝説」への執着があって、教育効果などという目的意識とは懸隔した悠々たる原初の時の物語が出てくる。主人公が追う「わらべ唄」の世界を..
鏡花幻想文学誌 異界/境界 63): 時代遅れと嗤う訓導に象徴されるような教育機構が普及中だった。『春昼』でさかしらな一切の文字が「△□○」という無意味性(ウンジッヒ)に解消されるように、無根拠な記号を功利的に流通させる「平地人」のみが鏡花に心底「戦慄せしめ」られたのだ。 ーこの項〈了〉ー
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