鏡花幻想文学誌 異界/境界 55): 巧妙に描かれた問題の「魔処」は要するに「踏む足許は、岩の其の剣の刃を渡るやう」とあって、まことに危い通路である。そして「右から左へ、僅に瞳を動かすさへ、杜若咲く八ツ橋と、月の武蔵野ほどに趣が激変」するところから察しても十分境界的な世界であるらしい。
鏡花幻想文学誌 異界/境界 56): まことにもって境界をめぐり、境界越えをめぐるめくるめく物語が展開するのである。死別した母の唄っていた手毬唄を知る人を尋ねて主人公の青年が探究の旅に出るうち、問題の土地の曰く因縁のありそうな空家を借りて住んでいる。
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