高山宏 學魔_nonbot 鏡花幻想文学誌 異界/境界 「平地人」の戦慄 18~20

鏡花幻想文学誌 異界/境界 18): この魔性の女は実は鬼女でもあるらしく、肉の誘惑にまけた男たちを動物に変化させてしまう。恋情のまま孤疑し逡巡する聖だが、その心情の優しさにめでて、女は聖を「魔処」から返す。であればこそ、こうして若輩の「私」にその物語をしてきかせることもできるのである。

鏡花幻想文学誌 異界/境界 19): この『高野聖』にして異界文学の骨法はみごとなまでに出揃っている。地名と時間にうるさい白昼の旅とそれを描くリアリズムの筆は、話〈中〉話の、時間の流れを諦棄し、「魔処」とのみ記して一切具体的な地誌にかかわらぬ「昔むかし」の説話の世界に引きとられる。

鏡花幻想文学誌 異界/境界 20): 徐々に現実が融解してというのではなく、現実とその中に闖入した説話世界とのはっきりした対比は動かないだけに、鏡花が明治30、40年代に異界というものをどういうものと心得ていたか、却ってはっきりしてくる。

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