高山宏 學魔_nonbot 鏡花幻想文学誌 異界/境界 「平地人」の戦慄 11~13

鏡花幻想文学誌 異界/境界 11): 地誌と時間の描写がえらく細かい。「山」を領略して「平地」化していった欧代近代の厭わしい高速の快感を「私」が追復しているかのごとくである。疾走する汽車のリズムを擬したアップ・テンポの文章がその快感をなぞる。

鏡花幻想文学誌 異界/境界 12): 「山」と「平地」を対比しようとするタイプの異界文学の常道が汽車の旅を道具立てにするのは、いかにも近代である。鏡花の場合なら『高野聖』。『春昼』でも停車場が重要な役割を果たし、『歌行燈』でも同じ。

鏡花幻想文学誌 異界/境界 13): 賢治なら汽車そのものが前近代化して異界の機巧となる。明治維新が何分の一かに縮めて断行した近代化の本場英国でも事情は同じで、『高野聖』に先んずること2年、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』でも冒頭の汽車旅行の描写は熾烈でさえある。

0